Derm.2016
KOH直接鏡検法
竹田 公信
1
1金沢医科大学医学部皮膚科学講座
pp.74
発行日 2016年4月10日
Published Date 2016/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204740
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最近,足白癬や爪白癬と診断された約246万人の実態調査結果(岩永知幸,他:日皮会誌 125:2289, 2015)が報告され,それによれば,初診時の直接鏡検法(以下,KOH法)の実施率が59%であったことがわかった.この事実は誤診のリスクはもちろんのこと,感染症という概念からみても決してよいことではなく,今回これを機に改めてKOH法について考えてみた.
KOH法は行わないと体験できないことがたくさんある.皮膚科の日常診療において,「体の皮疹は湿疹に見えますが,一応カビ菌の検査もしておきますね」と話しながら結果は陽性であることはたまにある.こちらはほっとする瞬間であるが,患者さんにとっては複雑な場面でもある.しかし,結果的に患者さんには接触皮膚炎を生じさせない限り迷惑をかけることはなく,症状を改善へと導くことができる.また,一般に皮膚の浸軟部や白濁した爪の先端部などは陽性率が低いといわれてきたが,実際に行ってみると意外に陽性が多いことに気づかされる.ほかに,アトピー性皮膚炎などの湿疹性病変,水疱性類天疱瘡や尋常性乾癬などの皮疹に紛れて存在する何か違和感のある皮疹からKOH法で菌糸を見つけたときの感動は皮膚科医のみ味わうことができる特権である.更に,行ったKOH法の結果から,常日頃から先入観を持たず診察にあたることへの戒めにもなる.
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