Japanese
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特集 腹部疾患縫合不全
結腸癌手術と縫合不全
Leakage following operations upon the cancer of the colon
山岸 三木雄
1
Mikio YAMAGISHI
1
1横浜市立大学医学部外科
pp.723-728
発行日 1965年6月20日
Published Date 1965/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203631
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結腸癌手術でいつも私の脳裏を離れない苦い経験が二つある.随分以前のことであるが,下行結腸,S字結腸移行部の癌を切除し,端々吻合を行なつたことがある.術後1週目,縫合不全による腹膜炎で死亡してしまつた.剖検により,下行結腸の移動が十分でなく,吻合部の緊張が強かつたことが縫合不全の原因と想定されたが,とにかく縫合不全であることに気付くのが遅すぎたのである.結腸手術に限らず,腸管手術の縫合不全は,局所症状,一般症状を詳細に観察すれば,診断はそう困難なものではない.しかし高齢者であると症状がはつきりとせず,診断が非常にむづかしいことがある.この症例も高齢者であつたためか重大なミスをしてしまつたが,後から考えると,術後脈搏の状態にもつと注意を向ければ診断の手掛りはあつた筈である.その後,当分の間,結腸癌手術というと,この縫合不全例が頭に浮んだことは当然である.第二の症例は,縫合不全を恐れすぎて失敗した例である.S字状部の癌で,閉塞性イレウスを起して救急手術を行なつた例である.後で考えると,two stage operationを行なうべきであつたが,根治的S字状結腸切除,端々吻合術を一気に行なつてしまつた.術後2日目,肛門から挿入しておいた排気管が抜けてしまつた.その直後患者が腹痛を訴えたので,縫合不全を恐れたあまり,ついに再開腹してしまつた.
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