随筆
それからそれ(その5)—大原総一郎さんと私
青柳 安誠
pp.648-649
発行日 1965年5月20日
Published Date 1965/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203619
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昭和37年5月23日.この日は,私が定年63歳の故を以て,満24年間在職した京大外科学教室を去らなければならない,私の誕生日である.京大は,日本で最初に定年制をしいた大学であるが,恩師島潟隆三先生の時代は,60歳が定年であつた.併し私の在職中に,それが63歳に延び,またその後において,誕生日を迎えた時の学年末ということになつたのである.
ところで,その年の3月のある日,突然に大原総一郎さんが,三階の私の部屋にみえた.私はその2年ほど前に,胆石症を手術してあげたことがあるのだが,当時,入院されたからということでべットに出向いてみると,久留米がすりの着物でやすんでおられるのをみて,いわゆる社長らしからぬこのかたの,人柄に私はいたくうたれていたのであった.
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