書評
—野村総一郎,中村 純,青木省三,朝田 隆,水野雅文 シリーズ編集 野村総一郎 編——《精神科臨床エキスパート》—抑うつの鑑別を究める
田中 克俊
1
1北里大学・産業精神保健学
pp.320
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204901
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私がフレッシュマンとして入局して間もないころ,教授から「うつ病の中核は抑うつ症状であり,抑うつ症状の中核は抑うつ気分である」と教えられた。ところが,その数日後に行われた教授回診時のやりとりの中で,同僚のフレッシュマンが,「憂うつですか? と伺ったら,患者さんがはいと答えられたので抑うつ症状があると判断しました」と答えたところ「そんなのは問診じゃない!」とひどく叱られてしまった。それを見ていた私たちフレッシュマンは「そんなにまずいこと?」とあたふた……。
後日,教授は,問診は患者さんの言葉を拾いながら行うべきであること,何十という気分や感情の表現方法があるように症状もそれぞれ違うのだから,こちらが勝手に決めつけてはいけないこと,そして,抑うつ気分があれば抑うつ症状で,抑うつ症状があるならうつ病だろうという単純な推論は絶対に避けるべきであることなどを話された。
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