Japanese
English
症例
カリクレイン・トリプシン不活化剤(Trasylol)を併用せる十二指腸乳頭癌治験例
Curative cases of cancer of the papilla vater with using kallikrein and trypsin inactivator
武田 淳志
1
,
角田 正良
1
,
原 修一
1
,
三宅 一忠
1
Kiyoshi TAKEDA
1
1岡山大学医学部田中外科
pp.1413-1417
発行日 1964年10月20日
Published Date 1964/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203456
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
膵頭十二指腸切除術を施行すると,術後胆管吻合部より胆汁が排泄せられ,そこへ膵からのトリプシニン分泌がくわわり胆汁で活性化されてトリプシンとなる.ところが,膵管はすでに乳頭部を欠除していて,膵液の逆流がおこり,膵炎や膵壊死をおこす可能性がある.また時には吻合部よりの漏出により吻合部周辺に自己組織消化がおこり吻合不全をきたす危険も伴う.十二指腸乳頭部癌の根治手術においては適切な手術操作はもちろんであるが,胆管や膵のように重要な臓器の吻合が正しくたもたれることが手術成功の鍵であろう.われわれは十二指腸乳頭部癌の根治術後にカリクレイン・トリプシン不活化剤であるトラシロールを投与することによつて吻合不全を防ぎ,術後36日にして軽快退院し術後2カ月で原職に復帰した症例を経験したのでここに報告する.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.