Japanese
English
外科の焦点
静脈の外科—主として静脈移植について
Surgery of vein:special references to the venous grafting
杉江 三郎
1
,
渡辺 正二
1
,
村上 忠司
1
,
田辺 達三
1
Saburo SUGIE
1
1北海道大学医学部第2外科教室
pp.867-872
発行日 1964年7月20日
Published Date 1964/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203368
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
静脈の外科という範囲を広義に解釈すれば,静脈血栓症,静脈閉塞あるいは静脈瘤など種々疾患が包含され,しかもそれらの手術的治療法ということになるが,ここではそのうち,主として静脈閉塞に対する外科治療の問題をとりあげ,ことに今日の焦点のひとつともなつている静脈移植の課題を論じてみたい.
元来静脈閉塞に対する手術治療の方面はややもすると等閑に附され,未開発のまま放置されてきたきらいがあつたが,それにはもちろん理由があつたわけである.同じく静脈閉塞といつても四肢静脈など末梢の静脈閉塞は副血行路の発達などのため重大な症状を呈するには至らず,したがつて手術適応の上でも,その解決を迫まられるほどの問題は少ないものであつた.また一方比較的太い静脈の閉塞は種々な臨床症状をあらわし,たとえば上大静脈閉塞症候群(Superior vena caval sy—ndrome),Budd-Chiari症候群,あるいは腸骨静脈閉塞による下肢のうつ滞と浮腫などは古くから知られ,種々な治療法も行なわれてきたが,ことに今日まで確実な静脈移植法というものが決定されていなかつたために,成績はむしろ決して良好とはいえなかつたものである.このような困難性のためにややもすると関心が薄れるという傾向も否み難い事実であつたであろう.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.