Japanese
English
綜説
静脈移植の現状
Experimental replacement of veins and its clinical issues
松本 博志
1
Hiroshi Matsumoto
1
1東京大学医学部胸部外科
1Dept. of Thoracic & Cardiovascular Surgery, Faculty of Med., Univ. of Tokyo
pp.525-531
発行日 1978年6月15日
Published Date 1978/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203204
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血管外科の進歩の著しい中で静脈の外科の分野は比較的進歩の遅い分野の一つである。この原因の一つには人工血管による静脈部位の血行再建が不可能とされていた事にあるといえよう。著者は上大静脈症候群,下大静脈閉塞性疾患および門脈再建などの疾患の外科的治療の適応拡大を考え,静脈血行再建に使用可能な人工血管の開発に従事してきた。これまでにも静脈血行再建時に動脈血行再建のための人工血管を用いた短期的成績についての発表はあるが,長期的な追求成績の発表はなされておらず,その成績は必ずしも満足のいくものではないと考えられる。著者はこれまでの静脈移植の研究について文献的考察を加え,従来の人工血管では静脈の血行再建は無理であることを知り,また静脈血行の特異性ならびに血栓形成に関する知見をもとに静脈血行再建のための人工血管すなわち人工静脈の開発が必要であると考えるにいたり,静脈内皮の性状に近い材料による人工血管の作成を目的として研究をすすめ,その研究成果については各方面に報告してきたが,最近では著者らが作成した人工血管が静脈移植に臨床的に応用され短期的にはほぼ満足のいく成績がえられるようになった。
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