随想 老外科医の随想・2
外科の専門分化ということ(2)
中田 瑞穂
1
1新潟大学
pp.200-202
発行日 1964年2月20日
Published Date 1964/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203260
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話が少し基礎学の方へそれてしまつたが,さて外科学に帰つて見るに,昔の時代でも外科医のうらにすでにAは虫垂の手術がうまいとか胆石はB先生に限るとか,胃ならC教授が第一人者であるなどという一種の専門のうちの専門が自然発生的とか,上手な宣伝によるのか,とにかくあることはあつた,これに類することは,内科でも耳鼻科でも何科にでもあることである.もちろんこれは現在の外科細分化とは性格の全く異るものである.現在では,腹部外科といつても昔に比べると非常に複雑になつて来た.膵臓も肝臓も副腎も?々独立研究の対象となるし,胃疾患一つをとつて見てもBillrothやv.Ei—selsberg, Mayo, Monyhan, Pauchet等の時代とは全くちがう.昔あまり普遍しなかつた脳外科もはつきりと専門化した.胸も日常のように開かれ,そして肺切,肺剔も通常の手術になつた.さらに心臓や大血管が簡単な手術時代を越えて,心内手術にまでなり,血管に代用管が使われるようにまでなつた.食道も胸前皮膚成型の食道でなく,胸内外いずれにも胃,大,小腸が吻合されるようになった.
この程度でもよければ,私も曾て考えたように,外科を凡そ三大別し,一般外科(腹部を含む)胸部外科,脳神経外科が中核になれば,現代の外科学は先ず先ずこなせる筈である.
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