講座 手術の実際
胸部上中部食道癌の手術
中山 恒明
1
,
山本 勝美
1
,
矢沢 知海
2
1千葉大学医学部第二外科
2千葉大学医学部麻酔科
pp.94-98
発行日 1964年1月20日
Published Date 1964/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203242
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言
もつともしばしば遭遇する胸部上中部食道癌で今日,教室で一番多く施行している手術法を紹介する.それは手術を3期的に分割して行なう.右開胸,胸壁前食道・胃吻合術である.なぜこのような手術を施行するかというと,全世界の胸部上中部食道癌の手術成績をみると,その大部分が25%以上という高い死亡率であるからである.この手術死亡率が高い理由は,食道癌患者の多くは高齢者である上に,栄養状態悪るく,いわゆるPoorRiskの症例で,開胸・開腹,あるいは開胸・開腹頸部手術という侵襲の大きい手術に耐えなければならず,しかも諸外国で多く行なわれている胸腔内吻合術のように,一度吻合部の穿孔を起こすと現段階では救命できないからである.元来,食道と胃断端の吻合部は血液循環の障害されやすい部分で,容易に組織壊死に陥つて穿孔を起こす危険がある.したがつて吻合部を胸壁前の皮下におくことは手術を安全にするという意味で大切である.以上の理由から,教室では,胸壁前食道胃吻合術を3期的に施行し,手術成績の向上とともに遠隔成績をよくしている.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.