Japanese
English
講座 外科領域
自家免疫に関連して—Ⅰ.癌患者における自家免疫性溶血性貧血
Notes on the autoimmune manifestations in patients with cancer:1.Autoimmune hemolytic anemia in patients with cancer
渋沢 喜守雄
Kishuo SHIBUSAWA
pp.80-89
発行日 1964年1月20日
Published Date 1964/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203240
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はしがき
外科領域でも自家免疫現象が活発に開拓されているが,ここでは自家免疫病自体を取り扱おうというのではない.癌患者には,何らかの自家免疫現象がなかなか高頻度に合併するという事実を,つかみ出してみたいと思うのである.自家免疫現象は1面からいえば個体の免疫機序に異常があるためであるから.癌患者には免疫機構に,したがつて生体防衛機作に,異変があるということになるだろうと思われる.なかには,そういつた自家免疫現象が癌のすべての症状よりも,かなり長い期間,先に出てくることがある.そうしてみると,癌患者に出てくる自家免疫現象は,癌発生の結果として起こつてくるという風に一方的には解しにくくなる.発癌と自家免疫発現とは,もつと深いところで,密接に関連しているのではあるまいか.先に筆者は,癌患者に血栓栓塞症が好発する事実,糖代謝異常の高頻度に合併する事実などを,簡単にうかがつて,そういつた方向から癌に接近する方法があることを述べた.自家免疫現象という角度から,癌の本態に肉迫する方法もあると思われる.こういつた意味で,癌患者における自家免疫現象の追究は,きわめて重要である.
まず自家免疫性溶血性貧血(autoilmnune hemo-lytic anemla,AIHA)をうかがつておきたい.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.