特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅰ)
初期胃癌—胃癌の全治を内科医の手によつて
東 陽一
1
1九州厚生年金病院
pp.447-452
発行日 1962年6月20日
Published Date 1962/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202899
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1.胃癌は治る
私たちが,まだ学生の頃,故入沢達吉教授の臨床講義で,耳に残つている数々の挿話の一つに,「諸君,胃癌で治る場合が,ただ一つある.それは,誤診のときである.」それは,内科的に胃癌を治療したときの話ではあろうが,外科医も,いわゆる根治手術を敢行して,術後5年生存の症例をつかまえることは,なかなか容易なことでなかつた.正直のところ,私も,今から20年前,熊本医科大学を去るときの記憶を辿つて見て,胃癌手術患者の1割も助け得たであろうか.
戦後,わが国医学の急速なる進歩にかかわらず,胃癌の根治手術の成績は,日本の最優秀と思われる大学や大病院の成績でも,30%の5年生存率を挙げることは困難のようである.近年次第に40%に近づいて来たかも知れないが,それも,手術の技術の向上ということよりも,早期発見早期手術の例が増加したことによると言う方が正しそうである.
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