忘れえぬ人びと
「癌全治」宣言
榊原 宣
1
Noburu SAKAKIBARA
1
1十全会心臓病センター榊原病院
pp.1413
発行日 2002年10月20日
Published Date 2002/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905001
- 有料閲覧
- 文献概要
イレウスであることは誰にでもわかる.対症療法をいろいろ試みるが一向に症状改善はみられない.これまで,子宮頸癌に対する放射線治療後のイレウス症例を経験しているが,開腹手術を行っても,術後難渋したことが多く,再開腹の決心がつかない.胃瘻からの排液があるため,状態の悪化は急速ではない.とにかく,症状改善を期待して対症療法を続けていた.そのうち,患者本人がこれまでと異なり,手術するしかないと思い始めた.毎日朝夕の回診時の説明が効果を現わしたのかもしれない.2月26日,開腹手術を承諾した.大変な決心であったと思われる.
2月27日,腹部正中切開で開腹.腹腔内を見ると,小腸は癒着して一塊となっている.注意深く剥離する.癒着が強く,剥離に際して漿膜面を傷つけたので,一部小腸切開,端々吻合を行う.腹壁は一期的に縫合して手術を終える.再癒着しないことをひたすら願った.術後1週間目から抜糸を行う。やはり放射線が照射されているので,創は哆開する.とにかく肉芽がきれいになるのを待つしかない.毎日,ガーゼ交換するたびに,患者は創は治るでしょうかと涙ぐむ.かならず治るからと励ます.その繰り返しである.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.