Japanese
English
薬剤
整形外科領域に於けるAtraxinの使用経験—術前,術後の使用経験
On the use of atraxin in the orthopedic surgery
橋本 広
1
,
三浦 正明
1
H. Hashimoto
1
,
M, Miura
1
1熊本大学医学部整形外科教室
1Department of orthopedic surgery Kumamoto University school of Medicine
pp.203-205
発行日 1958年2月20日
Published Date 1958/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202150
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緒言
手術を受ける患者の不安恐怖感は,術者の立場からは切実でないだけに,無関心にすぎるきらいがある.手術を危懼する心理状態は経験者でなくては計り知れぬものがあろうし,殊に整形外科領域では,緊急の手術以外に,何等痛みを感じない患者が,変形,機能障碍の改善のために手術を受けねばならぬ場合が多いので,我々術者の立場にあるものは,この点を大いに考慮すべきであろう.元来痛みとか恐怖感は,個人差のあるものであるから,どのような小手術に対しても,術者の深い思いやりがあつて欲しいものである.最近,新しい精神神経安定剤であるメプロバメート(アトラキシン)が精神的肉体的不安,緊張状態の除去を目的とし,広く精神科領域の疾患に使用され,効果が確認されつゝある.アトラキシンの化学構造は下記のとおりで,炭水化物と同じような直鎖状の新しい飽和化合物である.化学名は,2・2—メチル—n—プロピール−1・3プロパンジオール—ジカルバメートである.アトラキシンは,興奮を去り気分を和らげて,自然の眠りに導く安眠剤であつて,在来の催眠剤による非生理的,強制的な睡眠と違うという点に,大きな差異がある.またバルビツール酸系の催眠剤にみるような習慣性がないということは,安心して使用出来る利点である.また,骨骼筋の弛緩と鎮静作用があるといわれ,整形外科領域の術後鎮静剤としては好適といえる.
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