症例
整形外科に於けるカリクレインの使用経験例
小川 壽
1
Hisashi OGAWA
1
1九州大学医学部整形外科教室
1Department of Orthopedic Surgery, School of Medicine, Kyūshū University
pp.291-293
発行日 1956年4月20日
Published Date 1956/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201799
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緒 言
四肢の外傷や疾患にとつて,その復環状態の如何は病状を左右するものであり,整形外科領域に於ては四肢循環状態の保持改善には常に多くの注意を必要としている.
末梢血行を改善する薬剤は多数挙げられているが,カリクレインはE.K.Frey及びH.Krautにより発見された膵臓に於て作られる循環ホルモンで1926年以来詳細な報告があるが,四肢の循環障碍に有効であり,更に治癒困難な創傷,仮骨形成の遅延せる骨折等の際にも好結果が得られるとされている.その化学構造,薬理作用に就ては,その本態は未だに明らかでないが,高分子化合物で化学的性質としては,水溶性で不安定であり,酸及びアルカリ,アルコール,紫外線等により効力が失われると云う.その作用機転は,E.Werleによれば,血清中のグロブリン体Kallidinogenを酵素分解してKallidinと呼ばれるPeptidに変え,このKallidinにより血管拡張作用が現れると云う.本剤の臨床実験はE.K.Freyによつて行われ,多数の慢性及び急性の血管疾患並びに血管循環障碍を伴う疾病有効である事が明らかにされている.
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