外科と生理
その4
須田 勇
1
Isamu SUDA
1
1慶應義塾大学生理学教室林研究所
1Assist. Prof. of Physiology, KeiōGijuku Univ.
pp.386-388
発行日 1951年8月20日
Published Date 1951/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200877
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2:2觀察された肺の擴大と縮小
以上述べた胸腔及び肺の構造と運動に対する制約とから,肺の動きは各部位で異ることは容易に理解出来る.今,肺の運動を具体的に考えるならば,呼吸の本質から,気管支系の容積の変化を運動の目標とすることは一應妥当と考える.左右の気管支は各肺葉への総計5本の主幹気管支に分れ,それが上下,内外,前後に分岐展開しながら,夫々の分岐点を頂点とした円錐形の分布領域を形成する.從つて,肋骨及び横隔膜の運動により,気管支系は肺門を固定点として,伸ばされながら,振子運動と上下への平行移動運動を行うことになる.形態学的な構造より考えれば,III,VI,V肋骨の運動による肺門附近を固定点とした上葉前面及び側面での振子運動と,横隔膜による腱中心附近に固定点を持つ下葉の横隔膜周辺部の振子運動と上下への平行運動が最も著るしい筈である.
この点に関する実際の測定成績は佐藤・篠井のBronchoky—mographyによる研究が明にしている(佐藤・篠井:肺臓外科,1950平凡社)2:2図に示す如く,実際の肺—気管支の運動は構造から予想された動きと略々一致しているが,2つの点で量的な補正を要する.第1は,上葉に於ける矢状運動が案外に弱いことで,第2は,横隔膜による上下運動の影響が充分上葉に達する程強力(横隔膜振幅の1/3〜1/4)であることである.
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