外科と生理
その1
須田 勇
1
Isamu SUDA
1
1慶應義塾大學醫學部生理學教室研究所
1Medical Dep't, Keio-Gijuku Univ.
pp.240
発行日 1951年5月20日
Published Date 1951/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200821
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呼吸の生理
「外科と生理」という表題は「外科領域でよく出あう状態を生理学から説明するのでもなく,まして「外科医に必要な生理学の知識を與えようと」いう不遜な考えでもないと,私は理解する.生体の機能を実証的に体系ずけるという点では両者は共通でなければならない.たゞ「外科」の立場では主題が「疾病」に強制され易く,「生理」の立場では「最も取扱い易い実驗條件」でことが運ばれるという違いはある.從つて,原理の把握,具体の提出という同じ目的を達するのに,実驗の困難は前者に多いと考えられている.併し,実際の困難というより,「疾病」が極めて巧みに行われた精緻な自然の実驗系列であるために観察が困難であり,ともすると主系列から離れ,更に困つたことには,反應の記載,説明に終り,実証性を欠き易いことである.そこから独創と独断の混乱を招き,惡い意味での「臨床生理学」が生れる危險がある.
「臨床だからこれ位でよい」という言訳を設備の面からも考えの上からも,先ず,捨てねばならぬ.臨床であり,限られた條件下であれば測定も取扱いも多岐に亘り,優れた裝備と熟練を要し,「これ位でよい」という科学はどこにも存在しない.「それは自分の專門でないから…」という基礎側の逃げ口上も決して謙讓から出た言葉ではない.これは博識が学問であると考え違いをしている者の不遜な遁辞である.現在までの知見を原理的に把握し,その原理から條飾された臨床像を先ず解析する.
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