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胸廓成形術の肺機能に及ぼす影響及び陳舊性膿胸の膿pHの意義について—1. 胸廓形成術による膿胸性脊柱側彎症の側彎逆轉現象とその肺機能に及ぼす影響について 2. 陳舊性膿胸の意義について
木下 仁
1
1國立東京第一病院
pp.54-59
発行日 1949年2月20日
Published Date 1949/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200414
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第1 胸廓成形術による膿胸性脊 柱側彎症の側彎逆轉現象とその肺 機能に及ぼす影響について
緒言
戰傷性結核性膿胸が難治で後貽障碍が甚だ大きいことは,非戰傷性結核膿胸と異なる點はないことは永江の日本外科學會特別報告に述べている所である。結核性膿胸に對しては,最近は胸膜外胸廓成形術を行つて遺殘腔を消失せしめる方法が最も效果的なことは諸家の一致した見解で,本手術によつてもなお不充分な時は更に遺殘腔内筋肉瓣充填術を行えば,完全な效果をおさめる例が多い。
膿胸に對する胸廓成形術は,理想として遣殘腔を消失又は極小に縮小させると共に,呼吸循環器特に健側肺の機能に對しては少しも悪影響を及ぼきないことが必要である。そのためには術前,術後の肺機能を精密に比較較檢討し,手術による影響を詳細に究明し,その後にその除去手段を求めることが極めて合理的なものと信ずる。私はこの見地から胸廓成形術の影響を觀察しているうちに,本手術により膿胸性の脊柱側症彎が影響を蒙つて,側彎の向が逆轉する側彎逆轉現象を見出し,このような逆轉現象を起す前後の患考の肺機能を測定した結果,逆轉現象は肺機能に對し悪影響を及ぼすことを確實にし,從つつこのような側彎逆轉を起さないような各種の豫防對策を講ずる必要のあることの根據を明白にした。なお膿胸性脊注側彎症の原因論に關しては諸説があるが,私は私の經驗した側彎逆轉象から發足して新たな解釋を加えた。私の行つた肺機能測定法はクニツピングのスビロメトリーである。(前號參照)
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