増刊号 Common Disease 200の治療戦略
呼吸器疾患
膿胸(誤嚥性肺炎)
野村 浩一郎
1
,
木田 厚瑞
1
1東京都老人医療センター呼吸器科
pp.318-319
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904100
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疾患概念と病態
膿胸は,他の部位の炎症が胸膜に及び,胸膜腔に膿性の胸水の貯留したものと定義されている.この場合の胸水は,浸出性で多核白血球と線維素に富む.原因としては肺炎に伴う場合が最も多いが,その他,肺,口腔,咽頭・喉頭,椎体周囲,縦隔リンパ節,皮膚膿瘍などの炎症が二次的に波及したり,外傷や手術後の合併症として発症する場合などがある.急性期には,悪寒・戦慄を伴う高熱,咳,胸痛,発汗を訴える.このような膿胸に至る肺炎のうちで最も頻度の高いものは誤嚥性肺炎である.誤嚥性肺炎は3型に分類され,①pH2.5以下の胃内容物の逆流,②食物,飲水などの誤嚥,③口腔・咽頭粘膜に繁殖(colonization)した主としてグラム陰性桿菌の少量吸引(microaspiration),により発症する肺炎の総称である.誤嚥しやすい背景および基礎疾患(表1)と宿主の栄養状態,免疫能,および局所の防御因子の低下などが発症に関与する.
膿胸は,症状のない誤嚥性肺炎や,症状があっても治療が不適切であれば,壊死性肺炎(necrotizing pneumonia)あるいは肺膿瘍に進展する場合がある2).
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