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前書き
胆石生成論はNaunyn(1892)が炎症説を發表し,三宅,Mingnot(1898)等が實驗的に動物の胆石生成に成功して以來,炎症説が殆んど定説とされた。一方,Aschoff & Bacmeister(1909)は非炎症説を唱へ,Lichtwitz,Porges u. Neubauer及びSchade(1910)等は,更に膠質化學的に説明を試み,Berg(1923)は胆道機能障害説,Westphal(1923)は神經性機能障碍説,Rovsing(1925),松尾教授及びその門下による病的素因,新陳代謝異常説,之に對するGundermann等の反駁説等幾多活溌な論爭があつた。又最近には田村(1940)のX線分析法による結晶學的研究,田川(1940)の胆石生成と膵臓炎との關係,安部(1939),武内(1940)等の病的胆汁に於ける遊離胆汁酸の増加,住友(1946)の胆汁の緩衝作用による成因論,西村(1938),武市(1947)等の胆石分析による胆汁酸,脂肪酸の新知見 秀村(1947)の膠質化學的研究等陸續として研究報告がなされた。尚米國に於てはRalph-E,Dolkart(1939〜1940)等により,各種動物の胆汁の胆石溶解作用に付き,廣範な研究が行はれ,再び胆石生成論は擡頭して來た感がある。
恩師三宅博教授は,その門下と共に化學分析,胆道系解剖,胆石成因,胆道生理等あらゆる方面に再檢討を加へ,胆石症に關し相繼いで注目すべき業績を發表した。私は三宅教授より胆石生成に關し研究を命ぜられ,主として胆嚢胆汁の物理化學的追究を行ひ,胆汁の反應調節作用を更に嚴密,詳細に檢討し,胆嚢胆汁の反應調節作用が胆汁の凝析作用に重大な意義のある事を知り,胆石生成に新知見を得たので諸家の御批判を仰がんとするものである。
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