特集 蛔蟲
寄生蟲の移行及び移動に就て
小泉 丹
1
1慶應義塾大學
pp.45-49
発行日 1948年2月20日
Published Date 1948/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200285
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近時の寄生蟲の異常な蔓延擴布と感染の増率とに伴なつて(私は,伴なつてといつて,由つてとはいはない)寄生蟲病者も増してゐる。患者が増せば異常な症例もその數が多くなつて來るのが當然である。寄生蟲の蔓延とその感染率の價値のある數字が,必要なだけの條件を具へさして,得て置かねばならぬのが,この特殊な状態のもとにある日本の保健の資料として極めて必要なことである。また此と共に,このやうな状態のもとで,異常な症例がどのやうに,またどんな例があつたかを確かにして置くことも必要である。此に關して臨牀諸部門の諸家の周到な觀察と報告とが切望されるのである。
茲で年來私が感じて來て居り,特に近頃その感を深くしてゐることを附記して置く必要を感ずる。其は,寄生蟲に因る症候とする診斷を下すのに細心であつて貰ひたいことである。特に蛔蟲に關して,私は年來臨牀診斷に不滿を感じてゐるのであるが,近時此の寄生の高率化に伴なつて,この感が一層深いのである。一面に於て,蛔蟲の病害作用の周到正確な觀察と檢査とが望ましく,一面に於て,簡單に蛔蟲に因るものとする診斷に注意深くありたいのである。
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