論説
文化國家と寄生蟲
pp.314-315
発行日 1949年4月25日
Published Date 1949/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200447
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蛔蟲,鉤蟲,日本住血蟲病,肝臟ヂストマ,絲状蟲等による寄生蟲病及びアメーバ赤痢,マラリヤ等の原蟲病とは糞便によつて傳播されるか或は昆蟲の媒介によつて蔓延する疾患があるがこの種の疾病は先進文化國家に於ては環境衞生の改善によつて夙に防遏されたもので所謂PreventableDiseasesの隨一とせられて居るものである。然るに我國に於ては蛔蟲病は戰前から農村に濃厚に蔓延して農村民の健康を害して居つたものであるが太平洋戰爭以降都市菜園の普及により都市民の蛔蟲昆蟲率は倍加して種々の症状を頻發して居る。又鉤蟲病は戰前は主として農村病であつたのが現在は都市民の間もその浸染を受け健康を蝕まれて居る状態である。日本住血吸蟲と肝臟ヂストマ流行地に於ては戰前は強力に對策が講ぜられてその危害が減じつゝあつたが戰時下の諸衞生施設の弛緩は再びその跳梁を許す状態になつて居る。久しく奇病視されて居つた長江浮腫は我駐支軍によつて有棘顎口蟲病であることが明らかにされたが本病は戰時中食用として中支から輸入された鱈魚の媒介によつて九州中國地方に次第に淫浸し來り關東地方がその侵襲を受けるのも時の問題となつて居る。
アメーバ赤痢は戰前も國民の間に5%内外の胞子保有者が見られたが患者は稀であつた。然るに戰後上記保有率は10%内外に上昇し且つ新原蟲株の病原性のためか發病者が頻發するやうになつた。
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