論説
公衆衞生と寄生蟲
宮川 米次
pp.311-314
発行日 1949年4月25日
Published Date 1949/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200446
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寄生蟲の侵淫度は文化のバロメーター
私は大學の學生時代,衞生學の横手先生から,一國の文化は石鹸の使用量の多寡に比例するものだと教えられて,そういうものかなとは思つたが,ピントしなかつた。然るに今日此頃それが,ひしひしと首肯かれてならない。熱帶病學の大家シヤウデインは一國の文化はその地の寄生蟲の浸淫度と正比例すると喝破して居られるが,今次の體驗をうるまでには,誠に金言だなと思われなかつた。今から約十數年前に,チエコの靑年のシヤウリツチといふ學徒が,文化交換學生として,私の所へ約1ケ年計り留學したことがあつた。彼はバルカン地方の蛔蟲の浸淫の如何にも激しいことを常に口にし,北歐の文化地帶とは,隔世の距りがあるとつくづくと述懷したことも思い出されてならない。かくして我等の現状を觀るに,我等の文化は,正に文字通り一世紀後戻りしたといつてよいのではないかと思われてならない。
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