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郭清必要の立場から
Z0011試験,IBCSG23-01試験,AMAROS試験,これら3つのセンチネルリンパ節(SLN)陽性症例に対する追加郭清の省略を目的とした試験では,腋窩郭清省略(No-AD)群の無病生存率,全生存率は追加郭清(AD)群と同等であった.しかし,ADが局所制御に重要な役割を果たす症例は一定頻度存在する.BluteらのSLN陰性,腋窩リンパ節再発症例の検討では,腋窩再発後の5年無病生存率50%,5年全生存率58%と,決して良好ではない.上記3試験でも,no-AD群の腋窩再発率は有意ではないものの高い.また,SLN陽性後,追加郭清を省略したために,その後,腋窩再発を繰り返す症例をわれわれは経験している.ADのデメリットとされる上腕浮腫も,BMIが低い日本人では頻度は低く,許容できるレベルにあると考えられる.以上より,追加郭清省略は安全に施行できる症例群の特定など,さらなる研究の進展を待つべきであり,安易な導入は慎むべきである.
郭清不要の立場から
①こちらを選ぶメリット
過去のエビデンスから,臨床的腋窩リンパ節転移陰性症例においてセンチネルリンパ節転移陽性でも一定の条件を満たせば,郭清省略が臨床上問題となるような腋窩再発率の増加を招かない.さらに,腋窩リンパ節郭清を省略することでリンパ浮腫,上肢可動制限,腋窩から上腕にかけての疼痛や知覚異常といった有害事象の発現頻度を減らし,生活の質の低下を防ぐことができる.
②その場合のデメリットと考え方・対処法
センチネルリンパ節転移陽性にもかかわらず腋窩リンパ節郭清を省略することで,腋窩に転移陽性リンパ節を遺残させる可能性が高くなる.術後5年の局所再発率の増加と術後15年の乳癌死亡率の増加は4対1の比率で相関することが示されており,郭清省略後の腋窩再発率の増加を可能な限り低く抑えなければならない.そのためには最適な薬物療法と腋窩への放射線治療が重要であると考える.
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