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I.はじめに
頭頸部領域の癌の組織型は扁平上皮癌であり,転移様式はリンパ行性が多いと考えられている。すなわち原発巣摘出の際,リンパ節転移の有無を判断することが重要となる。頭頸部癌では摘出後に再建手術が必要な例も多いことから,原発巣の状態からN0症例でも既に微小なリンパ節転移をきたしている可能性が高い症例では,予防的な所属リンパ節郭清術を施行することも多い。しかし,この結果頸部の疼痛や顔面の浮腫,頸部の絞扼感などが生ずる。
舌癌は,口腔癌の中で最も頻度が高く半数を占めるとされる。舌癌T2N0M0で深部浸潤のある例では,予防的郭清術が行われることも多い。舌癌では比較的早期から頸部リンパ節転移をきたすこと(約20%の症例に潜在的転移が発見されるとされる)が知られていることと,原発巣の深達度が頸部リンパ節転移に関係があるとされるためである。1990年,Shah1)は頸部リンパ節郭清でのリンパ節転移を検索し,口腔癌ではレベルⅠ58%,レベルⅡ51%,レベルⅢ26%,レベルⅣ9%,レベルⅤ2%と報告している。平成8年度厚生省がん研究助成金真島班での舌癌頸部郭清術252例での解析では,潜在的転移陽性率は37%で,T2例では40%であった2)。転移が認められた部位は,レベルⅠ13%,Ⅱ19%,Ⅲ14%,Ⅳ6%であった。以上から,舌癌N0例で予防的郭清を行う場合には上頸部郭清術が推奨されている。しかしT1,T2の早期舌癌に対する頸部リンパ節の取り扱いは,施設間で差があるのが現状である。Fukanoら3)は,原発巣の深達度が5mm未満の症例では頸部リンパ節転移は6%に過ぎなかったが,5mmを超える症例では転移が65%にみられたと報告している。上述のごとく頸部リンパ節転移の制御は舌癌治療成功の鍵として重要な因子である。
しかし,実際には頭頸部領域でのリンパ流の流れは複雑で,原発部や組織型によっても転移様式は異なり,郭清が必要か必要でないかを術前に判定することは困難であった。最近この解決法として,センチネルリンパ節の概念による術中診断法が試みられている。
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