1200字通信・60
手の悪(わろ)き人
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.1433
発行日 2013年12月20日
Published Date 2013/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104885
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- 文献概要
最近は,院内のオーダリングがパソコンでの入力となり,悪筆の問題では以前ほど困ることはなくなりました.しかし,たとえ全面的に電子カルテにしたとしても手書きの部分は残るわけで,かえって悪筆が目立つことになります.ただ,他院からいただく紹介状にも悪筆のものがあり,肝心の内容が理解できないだけではなく,なかには紹介医のお名前すら判読できないこともあり,この問題が当院だけのことではないと苦笑いさせられることにもなります.そうした先生方は,きっとよほど御高名な名医なのだろうと,お名前を存じ上げない自分を恥じることになっています.
そんな折,昔習った『徒然草』を,ふとしたことから読み直す機会がありました.悪筆の問題は兼好さんの時代にもあったようで,第35段に,「手の悪(わろ)き人の,憚らず文書き散らすはよし.見苦しとて人に書かするはうるさし」とあります.中学か高校で習ったのだとは思いますが,今から思えばそんな子供の頃に兼好さんの思いを理解できるわけもなく,この歳になってやっと実感として味わうことができるということのようです.
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