必見! 完全体腔内再建の極意・1【新連載】
胃切除後再建術式の変遷
佐藤 裕
1,2
Hiroshi SATO
1,2
1誠心会井上病院外科
2日本医史学会
pp.440-447
発行日 2013年4月20日
Published Date 2013/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104534
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■Billroth Ⅰ法の登場
1881年1月29日,かねてから周到な準備を重ねてきたTheodor Billroth(1829~1894:図1)は,弟子のWölfler(1850~1917)らとともに胃癌患者に対して幽門側切除を実施し,絹糸による一層の奨膜筋層縫合で残胃と十二指腸を吻合して,約1時間半で手術を終えた(図2).進行胃癌であったが患者は耐術し,術後約4か月生存した.その死後,Mikulicz(1850~1905)らが本手術(特に残胃十二指腸吻合)の成否を検証し,この吻合が完璧になされていたことを確認した(図3).しかし,再建術式として残胃の上半端に十二指腸を吻合していたため(“oralis superior”にしたため:図2),残胃の下方の盲端部分が囊状に拡張して通過障害をきたしていたことから(図3),のちに吻合方式を“oralis inferior”に変更した.そして,これがいわゆるBillroth Ⅰ法(BⅠ法)の原型となったのである.
この2年前の1879年にフランスのJulius Péan(1830~1898:図4a)が「その腕に物を言わせて」胃切除を敢行したが,さしたる術前準備もなかったこともあって,患者は術後5時間で死亡した.ただ,これを受けて,ドイツに対して強い対抗意識をもつフランスでは現在でも「Billroth法」とは呼ばすに「Pean法」と呼んでおり(図4b),あるフランスの外科学書には“Gastrectomie des deux tiers anastomose gastro-duodenale selon Péan”と表記されている.
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