勤務医コラム・17
授業というより講談
中島 公洋
1
1慈仁会酒井病院外科
pp.1399
発行日 2010年10月20日
Published Date 2010/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103219
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看護学校の講師を引き受けた.大先輩から,「中島くん,アンタもいい年だから,自分のことばかりじゃなくてこういう仕事もやってみなさい」とのお言葉を頂戴し,「ハハ~ッ」とお引き受けしたのだ.
始めてみると知らないことばかりで,自分で自分にあきれる.ほんの何年か前までmajorな手術をたくさんやって何でもわかっているつもりになっていたのに,いざ生徒の前に立つと,何にもわかっていないと知った.「なぜ赤血球には核がないの?」「血液の付着したガーゼは何廃棄物?」「DNAとRNAの違いは?」……生徒に尋ねられてウッと言葉につまる.いつもお茶を濁してばかりで我ながら情けない.今日も,感染予防と隔離の話から,昔の癩病の話へと飛び火し,ついには松本清張の「砂の器」や,関ヶ原前夜における大谷吉継・石田三成の友情について,延々と熱く語ってしまった.勉強の話のときは机に突っ伏して眠っている生徒が,私の話があらぬ方向へ熱を帯びてきた途端に,ムクッと起き上がって聴いている.いかん,授業というより講談になっている…….こんなことでは試験も脱線しそうで恐い.「先生,へんな問題出したら大ブーイングやからね」と生徒に念押しされ「ハイ」と答える私.どっちが先生なのか?
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