ひとやすみ・64
越中富山の薬屋さん
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1433
発行日 2010年10月20日
Published Date 2010/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103228
- 販売していません
- 文献概要
私が子供の頃は現代と比べると医療機関や薬局が極端に少なく,病気に罹患しても自宅で療養するのが常であった.特に私が育った東北の片田舎では薬屋さんが置いていった薬を利用したものである.薬箱には整腸剤や下剤,傷薬などが常備薬として収納され,母親の見立てで薬を服用した.
薬屋さんは年に2回ほど大きな風呂敷包みを背負って村中を巡回した.薬屋さんが村にくると,子供らも後ろを付いて回った.「越中富山の薬屋さん,鼻くそ丸めて萬金丹,それを飲むのがアンポンタン」と冷やかしながらも,薬屋さんの来訪を心待ちにしていた.背負った大きな柳行李のなかから薬を取り出し,使った薬を補充し,期限切れの薬を交換した.そして使用した薬の代金を徴収したあと,子供たちが待ち焦がれるお土産を行李から取り出した.薬の広告が印刷された紙風船で,当時としては貴重な子供の遊び道具であった.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.