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要旨:わが国の癌診療ガイドラインの歴史は浅く,ガイドラインが次々に作成されてはいるものの,それを支える,あるいは応用する医療体制と法体制の整備とコンセンサスはきわめて不十分である.今後になすべき課題が具体的にようやく提示されている昨今と言えよう.
診療内容の質を向上させつつ医療費を抑制し,かつ安全性の高い納得のいく医療提供を目的として,欧米では1970年代後半から診療ガイドラインの作成が始まった.わが国におけるがん診療ガイドラインの作成動向は1990年代後半に,わが国としては最も発生頻度の高い「胃癌」のそれではじめてみることができる.その後,最近まではガイドラインの存在意義と概念の普及に力が注がれ,そして具体的な作成のための手順の確認,そして完成版の発行へ至る在り方を周知させることに努力が払われてきた.
今日では多くのガイドラインが作成・公開されているが,癌領域の診療ガイドラインに関するわが国の現況はなお熟成されているとは言えない.作成組織間にも考え方の差は決して小さくない.短期間内に爆発的な作成がなされたが,わが国の医療制度や社会的活用には十分に適合しない現象がみられる.国民の間に十分に認知されたうえで利用されている状況にあるとは言えず,ガイドライン作成初期に設定されていた目的に必ずしも十分に沿っていないことが事実として認められる.
今日に至ってはすでに更新時期を迎えたガイドラインも多く,癌診療ガイドラインについては新たな段階を迎えていると言える.すなわち,(1)診療ガイドラインの評価,(2)成熟したガイドラインの在り方に基づいた改訂,(3)医師以外の医療従事者や国民へ向けてのガイドラインの公開と普及,(4)ガイドラインの実践的利用とそのアウトカムへの影響,(5)ガイドラインのもたらす利益・不利益,限界点と社会への影響,などが検討事項として挙げられる.
本稿では,癌診療ガイドラインのわが国におけるこれまでの動向と今後の在り方の概要を紹介する.
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