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あとがき
畠山 勝義
pp.1160
発行日 2008年8月20日
Published Date 2008/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102244
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2006年の第61巻8号のこの「あとがき」で,佐渡におけるトキ(朱鷺)の「野生復帰への弾み」について述べたが,その後の進展状況を紹介したい.トキはコウノトリ目トキ科の鳥で,日本古来のトキ(Nipponia Nippon)は全滅し,現在のトキは中国から借りてきたペアのトキからの子孫であること,2008年の試験放鳥,2015年の野生復帰を目指していることは前述した.
この2008年の試験放鳥が今秋にも実現されようとしている.佐渡市新穂にある「トキ野生復帰センター」では,15羽が自然の山野に野生復帰できるように訓練を受けている.この訓練により,冬の雪が積もり凍った水辺でも餌となるドジョウが捕れるようになったという.また,さらに大きな進展は,トキのつがいがこの春につがい自身で巣作りを行い,自ら生んだ受精卵を温め雛が誕生したことだ.これまでは人工孵化または自然孵化が主体であり,2006年からは自然孵化が多くなってきたとはいえ,自然に限りなく近い状態でヒトの手助けなしにトキが繁殖したのは初めてであり,これは野生復帰に向けての大きな進歩と言えそうだ.これらトキの半年の野生復帰へ向けた訓練の状況は5月23日午後7時30分からNHK総合テレビで放送されたので,目にした読者もあるかもしれない.この秋の試験放鳥の結果が大いに期待されている.
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