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あとがき
畠山 勝義
pp.156
発行日 2007年1月20日
Published Date 2007/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101752
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宇和島徳洲会病院で2005年9月に行われた生体腎移植で,レシピエント側からドナーに対して現金30万円と車が手渡されていたとの報道があり,レシピエント,ドナー,仲介者ともに逮捕され,起訴された.愛媛県警の調べによると,レシピエント(59歳,男性)の内縁の妻(59歳)が仲介者となり,借金をしている女性(59歳)を妻の妹と偽ってドナーとして手術を実施したという.医療側はこの関係をうのみにしたことになる.また,この病院には倫理委員会はなく,腎移植の執刀医が日本移植学会の会員ではなかったことも問題視された.もし,倫理委員会があって審議されたならば,レシピエントの「内縁の妻」と「内縁の妻の妹」という関係が問題となったであろうし,また妹と称する人が同じ59歳であることも問題となり,まったくの他人をドナーとして移植することは避けられたように思える.まったくの他人からの生体移植であるからには,そこに金銭的配慮が存在するであろうことは容易に理解できる.
現行の臓器移植法では,脳死ドナーの取り扱いについては非常に厳密に定めてあるが,生体移植に関しては移植臓器の売買の禁止以外は明確な規定がないのが現状である.一方,日本移植学会では生体移植の倫理指針を出している.これによると,ドナーになれるのは親族が原則で,この親族の範囲が「6親等以内の血族と3親等以内の姻族」とされている.姻族とは配偶者の血族を指しているので,配偶者の兄弟姉妹や甥姪などまでが対象となる.これを遵守して生体移植を行うとすれば,血族でも遠い親族の場合や姻族の場合には十分な審議が必要と思われる.
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