カラーグラフ 外科手術における新しいテクニック―new art in surgery・20
尾状葉付き左葉グラフト
石崎 陽一
1
,
川崎 誠治
1
Yoichi ISHIZAKI
1
1順天堂大学医学部肝胆膵外科
pp.1489-1495
発行日 2008年11月20日
Published Date 2008/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102358
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はじめに
成人例における生体肝移植は左葉グラフトで始められたが,一部の施設からグラフトサイズが小さいためレシピエントの代謝要求を満たすことができず,移植成績が不良であることが報告され,最近では右葉グラフトによる移植が優位になっている.2005年までの日本肝移植研究会の集計では,18歳以上の成人例でのグラフトは右葉グラフトが1,348例と最も多く,ついで尾状葉付き左葉グラフトが434例,左葉グラフトが402例であった.
しかしながら,ドナーの術後合併症の発生率は左葉グラフトが右葉グラフトより低いことが報告されており,生体肝移植ではドナーの安全性が最優先されるべきであることを考慮して,当科ではグラフト肝容積/標準肝容積比(以下,GV/SV比)が30%以上であることを原則とし,すべての症例に左葉グラフトを使用している1).尾状葉は全肝容積の3~4%にしか過ぎないが,尾状葉を含めた左葉であればグラフト重量の8~12%の増加が期待できる2).したがって,GV/SV比が30%に満たない症例に対しては尾状葉付き左葉グラフトを考慮している.
本稿では,尾状葉付き左葉グラフト採取におけるポイントを解説する.
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