特集 肛門疾患診療のすべて
9.肛門部悪性腫瘍
稀な肛門癌の診断と治療―基底細胞癌および類基底細胞癌,Paget病,Bowen病
稲次 直樹
1
,
吉川 周作
1
,
増田 勉
1
,
榎本 泰三
1
,
内田 秀樹
1
,
大野 隆
1
,
西脇 英敏
1
,
山口 貴也
1
,
山岡 健太郎
1
,
稲垣 水美
1
,
下林 孝好
1
,
申 智宏
1
,
小山 文一
2
,
藤井 久男
2
,
内本 和晃
2
,
中島 祥介
2
,
榎本 泰典
3
,
野々村 昭孝
3
Naoki INATSUGI
1
1健生会土庫病院奈良大腸肛門病センター
2奈良県立医科大学消化器・総合外科
3奈良県立医科大学病理学教室
pp.245-255
発行日 2008年10月22日
Published Date 2008/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102340
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要旨 基底細胞癌は転移する危険がきわめて少ない局所的な癌であるが,これに類似する類基底細胞癌は扁平上皮癌の亜型と考えられており,転移の頻度の高い癌である.一方,Paget病は表皮内に発生する腺癌であり,真皮内に浸潤すると転移をきたしやすく予後不良となる.Bowen病は浸潤癌に移行することがきわめて稀な表皮内の扁平上皮癌である.これらの癌は患者にとってはほかの消化器癌に比して最も早く症状を呈する癌であり,医師にとっても肛門をみれば明らかに「何かある」とその存在が感じられ診断の容易な癌であるにもかかわらず,発見時には数cm大となっていることが多い.その原因として,1つには患者の羞恥心,あるいは湿疹ではないかとの誤った自己診断による受診回避がある.もう1つは第一線の医師の肛門診―視診・指診・肛門鏡診―に対する軽視が挙げられる.今回の特集では肛門疾患診療のすべてが網羅されている.「肛門」がいかに重要な臓器であるかを知らしめるとともに,「稀な肛門癌」の存在を念頭に置いて肛門をみることがいかに重要であるかがいっそう明らかにされることと思う.
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