外科学温故知新・15
食道外科
桑野 博行
1
,
福地 稔
1
,
加藤 広行
1
Hiroyuki KUWANO
1
1群馬大学大学院医学系研究科病態総合外科学
pp.1637-1640
発行日 2006年12月20日
Published Date 2006/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101660
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1 はじめに
消化器のなかでも食道は解剖学的により手術困難な臓器として,その術式や周術期管理法などに多大な努力が払われてきた.また,食道癌についてはその悪性度の高さから転移,再発のメカニズムの研究が重点的になされ,その病態の解明とともに診断学も進歩し,深達度別,リンパ節転移度別に治療方法を個別化する方向に進んできている.他臓器には類をみない綿密な診断に基づく集学的個別化治療による成績は,この半世紀で格段の進歩を遂げた.これは,治療法の中心を担う外科切除の成績向上,すなわち,安全性,根治性,QOL(quality of life)の向上を目指した,先達のたゆまぬ努力に負うものである.近年では上従隔の徹底的リンパ節郭清や3領域リンパ節郭清が比較的安全に実施されるようになり,手術症例の5年生存率が50%に達するようになってきた1).
しかしながら,食道外科の歴史は麻酔法,輸液法,栄養法および呼吸管理法などの進歩と表裏一体をなしながら,合併症の克服を目的とした苦難の歴史でもある.それが種々の再建臓器や再建経路の選択につながり,術式の多様性に帰結したと考えられる.
本稿では,「食道癌の外科」の歴史を振り返り,今後の進むべき方向性について考察したい.
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