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はじめに
呼吸器疾患の分野において画像と組織像を対比したstudyは“Heitzman's the Lung―Radiologic-Pathologic Correlations”に代表されるように古くから行われてきたが,胸部単純X線に加えてCTが用いられるようになると,薄いスライスとして病変が描出されるため,画像と組織像との対比がより正確に行われるようになってきた.特に近年の画像診断の進歩は目覚しく,高分解能CT(high resolution CT),螺旋CT(spiral CT),マルチスライスCT(multiditector CT)の出現に伴い,病変部をより詳細かつ三次元的に,しかも短時間に構築することが可能となった.われわれ外科医は,これらの画像情報をもとに手術のシミュレーションを行い,また,切除した標本の病理像から画像を見直すことによって日常の診断能力の向上をはかるなど,これらの画像情報から受ける恩恵は大なるものがある.
ところで,胸部単純X線やCT検査の異常所見は,病変が「腫瘤性病変」か,あるいは境界が不明瞭な「びまん性陰影」,「浸潤影」かに大きく分類される.われわれ外科医が携わる日常の臨床の場において特に重要となるのは,腫瘤性病変に対して良・悪性の鑑別を含めた質的診断を行うことである.
腫瘤性病変は一般に径3cmまでのものが結節(nodule),3cmを超えると腫瘤(mass)と呼ばれる.病変が大きくなるにつれて悪性疾患の可能性も高くなり,また,それぞれの疾患に特徴的な画像所見を呈することもあるが,小さな病変では画像所見から得られる情報を頼りに十分な検討がなされなければならない.
肺の腫瘤性病変は,われわれが経験した手術例をみると,約80%は悪性腫瘍である.悪性疾患に関しては他稿に譲るとして,本稿では,日常の診療のなかでしばしば経験される代表的な肺の良性疾患について,特に肺腫瘤性病変を中心に画像所見と切除標本の病理像を対比して呈示し,病態生理について概説する.
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