カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方 24
肺の切除標本の取り扱い方
吉田 浩一
1
,
加藤 靖文
1
,
柿花 昌俊
1
,
辻 興
1
,
海老原 善郎
2
,
加藤 治文
1
Yoshida Kouichi
1
1東京医科大学第1外科
2東京医科大学第2病理学
pp.287-293
発行日 2003年3月20日
Published Date 2003/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101247
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はじめに
ヒトゲノムの解析が完了し,ポストゲノム時代の幕開けとなった昨今であるが,分子生物学的研究の情報量は毎年飛躍的に増加している.今後,分子診断学の進展に伴って診断技術が向上し,遺伝性疾患に限らず遺伝子診断の対象となる疾患は大幅に増えてくるものと予想される.このような時代背景を踏まえ,近年では手術材料の扱い方も基本のホルマリン固定標本に加え,遺伝子解析を目的とした特別な処理法が多くなってきている.
しかし肺の切除標本の処理を外科医が自ら行うにあたって最も重要なことは,基本のホルマリン固定が正しくできるかどうかということである.切除標本の固定が悪いものは染色性の低下を招き,また固定まで時間のかかった標本では自己融解が強く,診断に苦慮しかねない1).
当施設では肺の手術症例の全例において外科医が切り出しまで行っており,図1に簡単なチャートとして作業の流れを示した.
肺の標本はホルマリン固定後に割を入れ切り出した後,3次元的に血管,気管支を同定する必要がある.この作業は術前の内視鏡所見や手術所見を熟知している外科医が担当することが望ましいと思う.病理医には血管,気管支を命名したのちに手渡すのが最善である.正しい標本整理の仕方と基本的な固定法は身に付けておくべきであり,ここでは当施設で通常に行われている検体の処理を紹介する.
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