外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・35
成人鼠径ヘルニア手術でヘルニア囊の切除は必要か
岡崎 誠
1
Makoto OKAZAKI
1
1市立伊丹病院外科
pp.1514-1515
発行日 2006年11月20日
Published Date 2006/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101061
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【素朴な疑問】
最近,成人の鼠径ヘルニアの手術は,人工物であるメッシュを用いた手術が標準的になっているのは周知のとおりである.メッシュにも種々のものが出現し,術式も多様になっている.学会や研究会でも,メッシュを使用するときはヘルニアのタイプにかかわらずヘルニア囊の切除は必要ないという発表もみられ,やや混乱がみられる.このへんのところを少し詳しく検証してみる.
【メッシュを使用しなかった時代での検証】
20年以上前にヘルニアの手術を習ったとき,ヘルニアの手術はヘルニア囊,いわゆるヘルニアサックを見つけ,それをできるだけヘルニア門の根部あるいは腹膜前脂肪組織近くまで剝離し(ヘルニア囊の高位剝離),根部で切除するのがヘルニア手術の一番大事なポイントであると教わった.だから,まだヘルニア手術に自信がないときは,ヘルニア囊あるいはそれらしきものを見出すとほっとしたものである.外鼠径ヘルニア(あるいは間接ヘルニア)のときはこれでいいのであるが,内鼠径ヘルニア(直接ヘルニア)のときはさまざまな意見があり,この場合もヘルニア囊を見出し切除すべきという意見と,ヘルニア囊が不明なときは補強のみでいいという意見に分かれていた.
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