外科の常識・非常識 人に聞けない素朴な疑問 20
鼠径ヘルニアの手術は必要か
安達 洋佑
1
Yosuke Adachi
1
1岐阜大学医学部腫瘍外科
pp.1144-1145
発行日 2005年9月20日
Published Date 2005/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100186
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鼠径ヘルニアの手術は3つある.(1)嵌頓や絞扼に対する緊急手術,(2)疼痛や不快感などの症状に対する緩和手術,(3)嵌頓や絞扼などの合併症を避けるための予防手術,である.(1)は必要であり,(2)は有用であるが,(3)はどうであろうか.救急外来や外科病棟では嵌頓や絞扼をみることが多く,鼠径ヘルニアは「嵌頓や絞扼の危険性が高い」,「緊急手術になる可能性が高い」と錯覚してしまう.
鼠径ヘルニアはわが国では「脱腸」と呼ばれ,ありふれた疾患(common disease)である.人口の高齢化に伴って,巷には鼠径ヘルニアを持った人がたくさんいる.もしかすると,鼠径ヘルニアは病気ではなく,年寄りになると耳が遠くなり肛門がゆるむのと同じような「老化現象」かもしれない.
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