外科学温故知新・11
癌化学療法
今野 弘之
1
Hiroyuki KONNO
1
1浜松医科大学外科学第2講座
pp.799-806
発行日 2006年6月20日
Published Date 2006/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100474
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1 はじめに
Nitrogen mustardが悪性リンパ腫の治療に用いられてから約60年が経過したが,多くの研究者の努力によってアルキル化薬,代謝拮抗薬,抗癌抗生剤,植物アルカロイド,タキサン,白金製剤,カンプトテシン,ホルモン剤,biological response modifier(BRM),分子標的治療薬,酵素製剤など,化学療法剤を主体として多くの癌治療薬剤が開発された.わが国においても優れた化学療法剤の合成・開発がなされ,各種の癌に対するレジメンの臨床研究も行われてきた.しかし,その後のわが国における癌化学療法の展開は満足すべきものではなく,EBM,ICH-GCPなどの理解・認識や標準療法の提示は比較的最近のことであり,欧米のレベルに必死にキャッチアップしようとしているのが現状である.
その一方で有力な新規化学療法剤が開発され,標準治療剤として次々と組み入れられており,一般臨床家が種々の癌に対する最新の標準化学療法をすべて理解するのは容易ではない.われわれ外科医も,固形癌に対する癌化学療法の急速な変化にどのように対応すればよいのか,多少困惑しているというのが実情であろう.このような現状を踏まえ,癌化学療法の歴史を振り返り,成果と問題点を今一度見直すことは意義深い試みと思われる.
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