Japanese
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臨床研究
シベレスタットナトリウム投与による食道癌術後の過凝固状態の制御
Sivelestat sodium hydrate used to control hypercoagulability after radical esophagectomy for esophageal cancer
竹村 雅至
1
,
大杉 治司
1
,
李 栄柱
1
,
西川 隆之
1
,
福原 784F一朗
1
,
岩崎 洋
1
Takemura Masashi
1
1大阪市立大学大学院医学研究科消化器外科
キーワード:
食道癌根治術
,
好中球エラスターゼ
,
手術侵襲
,
シベレスタットナトリウム
,
内皮細胞障害
Keyword:
食道癌根治術
,
好中球エラスターゼ
,
手術侵襲
,
シベレスタットナトリウム
,
内皮細胞障害
pp.499-504
発行日 2006年4月20日
Published Date 2006/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100422
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はじめに
近年の外科手術手技および周術期管理の向上によって食道癌根治術後の手術死亡率や術後合併症は減少してきているものの,依然として胃癌,大腸癌などのほかの消化管手術に比べ術後合併症の発症率は高率である1,2).この術後合併症のうちでも肺合併症は10%以上とする報告が多く,術後多臓器不全の原因となることもある.さらに,食道癌手術では手術侵襲の指標とされる血中の好中球エラスターゼ(PMNE)やInterleukin-6(IL-6)などのサイトカインが高値で推移することが報告されており,これらにより活性化された好中球が血管内皮細胞障害を引き起こし,様々な臓器機能障害を発症するとされている3,4).
これに対し,最近臨床で使用されるようになったシベレスタットナトリウム(エラスポール(R),小野薬品)は好中球エラスターゼの特異的阻害剤であり,生体侵襲によって惹起される全身性炎症反応(SIRS)に伴う急性肺障害(Acute lung injury:ALI)の改善効果があるとされている5,6).われわれの施設では,これまでこのシベレスタットナトリウムを食道癌根治術施行例の術終了直後から投与開始することで,術後IL-6値やエラスターゼ値が低値で推移し,肺障害の指標とされるPaO2/FiO2比(P/F ratio)が高値で推移することを報告してきた7,8).今回はさらに同様の投与方法を用い,シベレスタットナトリウムが術後の凝固能や血管内皮細胞障害に与える影響についてretrospectiveに検討した.
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