胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・2
Billroth―1881年―まで(1)
高橋 孝
1
Takahashi Takashi
1
1たむら記念病院外科
pp.491-496
発行日 2006年4月20日
Published Date 2006/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100421
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【癌をみる「まなざし」―病理,病因の変遷】(表1)
「癌がリンパ節に転移すること,転移リンパ節を郭清すると癌は治癒することを,いつ,誰が知ったのだろうか」,これが回答を求めている最初の質問です.1881年1月29日に胃癌に対する胃切除を世界に先駆けて成功させたときのBillrothの癌をみる「まなざし」を知りたいからであります.
話を1926年度のノーベル賞にまで飛躍させます.ノーベル賞の光と陰を物語るいくつかの本1,2)に必ず紹介されるのが,1926年度のノーベル医学・生理学賞(受賞は1927年)のFibigerによる線虫スピロプテラ・ネオプラスティカによる発胃癌作用であります.この線虫はゴキブリのなかに住みつき,これを食べたネズミは胃のなかに感染し,そこに胃癌が発生する.そしてこの寄生虫卵は糞のなかに排出され,これを食べたゴキブリの体内で再び繁殖するという生活循環を1913年に報告したのです.その後,この寄生虫発癌説は,ごく限られたネズミの種では正しいらしいが,一般的な発癌説としては誤謬であることがわかったのです.
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