胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・1
連載のはじめに―概観
高橋 孝
1
Takashi TAKAHASHI
1
1たむら記念病院外科
pp.343-348
発行日 2006年3月20日
Published Date 2006/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100388
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【自分史のなかでの胃癌リンパ節郭清】
「胃癌外科におけるリンパ節郭清は,いつ,どこで,誰が始め,それがどのようにして日本の胃癌外科に繋がってきたのであろうか」,この疑問あるいは課題は私にとっては積年のものであり,私の外科医としての生活のなかに深く入り込んでいるものです.
それは私が大学を卒業(1962年)したのち,確とした進路の定まらぬまま無為な5年を過ごしたのち,伝手を頼って大塚の癌研究会病院に梶谷鐶先生を訪ねて胃癌の手術を見学し,その摘出標本の整理に立ち会って以来のものであります.当時見た胃癌の手術は,これまでは表面的に無思慮に眺めていた外科手術そのものを根本的に考え直すきっかけを私に与えてくれました.たとえば,胃を血流支配する4本の動脈は,これらが結紮・離断されて胃は安全に切除されるものと考えていましたが,実はこれらの動脈は第一義的には結紮されるためのものではなく,郭清のためのリンパ節を追跡していく道標として考慮されなければならないことに気がつきました.
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