細胞学入門・1
連載のはじめに
山元 寅男
1
1九大・解剖学
pp.1623-1627
発行日 1972年7月10日
Published Date 1972/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204397
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細胞は生物の構造と機能の基本的単位をなすものであり,細胞の集合体が生物体である.このような細胞1個1個に生命現象がみられる.したがって,細胞学は,細胞の構造と機能を研究し,それによって,生命現象を明らかにすることを目的とした学問といえる.
細胞という,肉眼では観察できないものを対象とする学問が生まれたのは,顕徴鏡の発明に負うところきわめて左なるものがある,目で見ることから始まった学問である以上,形態を中心として発展してきたことは当然といえよう.したがって,細胞学といえば,細胞の形態学が中心となっていた.しかし,今日では,生理学的また生化学的手法手技の進展と,形態研究法の目覚ましい発展とにより,細胞構造の営む機能が詳細な点まで解明され,しかも,それらの分子レベルでの関連性まで明らかにされつつある.構造と機能とは一体化して研究されるべきであり,この両者の関連性を追究してはじめて生物の本態を把握し得る.この意味から,形態中心の旧来の細胞学のイメージよりも,もっと広い細胞の総合的研究を意味した細胞生物学という名称が用いられている.
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