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連載にあたって
医療現場で「チーム医療」の重要性がますます高まっています.かつての「名医」が中心となり医療を牽引する時代から,がん医療の発展とともに,多職種が連携することの重要性が認識され,チーム医療の概念が確立されました.厚生労働省はチーム医療を「多種多様な医療スタッフが,それぞれの高い専門性を前提に,目的と情報を共有し,業務を分担しつつ連携・補完し合い,患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と定義し,がん対策基本計画にもチーム医療の推進を掲げ,高度医療を提供する病院だけではなく,地域医療をはじめとする,がん診療にかかわるすべての医療機関にも広がりをみせています.
では,私たちは看護師としてチーム医療のなかでどのような役割を果たすべきでしょうか? 患者・家族の顕在・潜在的なニーズをアセスメントし,医療を患者の生活に落としこむ過程で看護師の視点は不可欠です.多職種が目標に向かうとき,それぞれの専門性が最大限に発揮され,個人では実現しえない医療を実現することが求められます.このときに必要なチーム医療のスキルセットについては,本誌の以前の特集(29巻4号「がんチーム医療の壁を乗り越える!」)で紹介されています.チームの状況を洞察し,より質の高く効果的なチーム医療のために,どのような場面でスキルセットを活用するか,本連載はさらに理解を深めていく内容となっています.
チーム医療の真価は,「誰かがすべてを背負う」のではなく,「それぞれが最適な役割を果たす」ことで発揮されます.個々の専門職は,他者の知識や経験を尊重し,補完し合うことが重要です.それぞれの視点の違いによって,新たな気づきや多角的なアプローチ,新たなアイディアが生まれ,チームの進化は専門職それぞれの成長にもつながります.本連載では患者と家族もチームの一員として巻き込みながら,ハイパフォーマンスチームによって患者にとって最良の結果を導くことを目指している,そんながん看護のスペシャリストが,現場でどのようにチーム医療を実践しているかを事例とともに紹介します.
チーム医療は現場で実践することで初めて意味をもちます.チームがなんとなくうまくいっていないと感じるとき,さらなる高みを目指すときに,この連載が,皆さんとともにチーム医療の可能性を探り,よりよい医療を実現する一助となることを願っています.
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