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はじめに
「食道癌治療ガイドライン」1)によれば,T1aN(-)に対するEMR以外は,どのステージにも手術と化学・放射線療法が記載されており,実際にどのように使い分けるかの議論は混沌としている.現在,当施設では,キャンサーボード(食道癌の治療に携わる全科が一堂に会して行うカンファレンス)を導入し,1人1人の患者をどのように治療するのがベストかを放射線科や化学療法科とも議論を重ねて治療のかたちを作り上げている.患者が納得いくような十分な説明とともに選択肢を示すが,安易に患者に治療法の選択を迫ることはしない.医師側で治療方針の統一をはかって患者に呈示するようにしている.
治療法の選択にあたっては,隣接臓器浸潤の診断およびリンパ節転移の診断が重要であるが,診断精度は必ずしも高いとは言えない.診断のあたりはずれによって患者が不利益を被る可能性をできるだけ低くしなければならない.
上縦隔郭清を中心とした郭清技術の進歩や術後管理の進歩によって手術成績は飛躍的に向上し,再建方法の工夫や胸腔鏡の利用によって胸壁破壊を最小限に抑える工夫などにより,根治性とともに術後のquality of life(QOL)も確実に向上している.しかしながら,切除可能であってもきわめて予後不良な症例が存在するのも事実であり,こういった症例に手術を選択するのは得策ではない.これまでの手術成績から,予後の改善が期待できる患者には手術を行い,予後不良な患者には手術以外の治療法を選択するという方針が現時点での妥当な戦略ではないかと思われる.
本稿では,(1)手術治療の工夫,(2)化学放射線治療を先行させたほうがよい患者をいかにして選択するか,(3)サルベージ手術はどうするかなどについて,現在われわれが行っている実際を紹介する.
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