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はじめに
脳梗塞は血栓形成により脳動脈の閉塞を生ずることで発症する虚血性脳血管障害である。現在の脳梗塞治療は,血栓溶解療法や抗凝固療法などの抗血栓療法が主流であり,一定の成果を上げてきてはいるが,虚血による脳組織の破壊,すなわち神経細胞死の防御といった観点からは十分な治療法が確立していないのが現状である。実験的に神経保護効果を有する種々の因子が知られてはいるが,脳は血液脳関門で守られているために薬剤の組織への移行度が低いこと,十分な効果を得るためには薬剤を頻繁に投与しなければならないことなどが予想され,既存の治療法では臨床応用がきわめて困難である。これらの問題を克服する新しい治療法として遺伝子治療が期待されている。血液脳関門を超えられない蛋白でも,遺伝子として導入,発現されれば,蛋白合成が恒常的に持続されるために投与回数が激減し,大きな治療効果が得られることが予想される。また,細胞外投与では効果を発揮しない神経保護因子も存在するが,遺伝子導入によればこの問題も解決できるであろう。
このように,遺伝子治療は従来の脳梗塞治療では不可能であった点を可能にし得る可能性を秘めた画期的な治療法である。本稿では,虚血性神経細胞死の分子機構を述べたうえで,現在までの脳梗塞に対する遺伝子治療の基礎研究を概説する。
The treatment strategies of cerebral infarction have been studied in order to prevent neuronal cell death. Gene therapy is one of the most promising therapy and has several advantage over classical drug thera-pies. There has been a problem that drug proteins are unable or difficult to pass through blood brain barrier. In gene therapy, however, drug proteins are ex-pressed in the brain with, transgene transfer tech-nique. Ischemic neural death proceeds with a complex series of pathophysiological events in the neurons. But molecular mechanism of ischemic neuronal cell death gradually understood.
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