Japanese
English
特集 遺伝子改変動物から神経変性疾患へのアプローチ
ハンチントン病モデル動物による神経変性疾患研究の現状
Huntington's Disease Model Mouse and Neuronal Cell Death
石黒 啓司
1
,
澤田 浩秀
1
,
西井 一宏
1
,
山田 晃司
1
,
永津 俊治
1
Hiroshi Ishiguro
1
,
Hirohide Sawada
1
,
Kazuhiro Nishii
1
,
Koji Yamada
1
,
Toshiharu Nagatsu
1
1藤田保健衛生大学総合医科学研究所難病治療共同研究部門
1Institute for Comprehensive Medical Science, Fujita Health University
キーワード:
Huntington's disease
,
knock-in mouse
,
transgenic mouse
,
knock-out mouse
,
CAG repeat
Keyword:
Huntington's disease
,
knock-in mouse
,
transgenic mouse
,
knock-out mouse
,
CAG repeat
pp.829-837
発行日 2001年9月1日
Published Date 2001/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901829
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はじめに
ハンチントン病(HD)は常染色体優性遺伝形式をとる神経変性疾患である。その主な神経細胞の脱落は尾状核と被殻(あわせて線条体)の小型の神経細胞においてである。これにより,発症は慢性進行性の舞踏運動を伴う不随意運動と精神障害(性格の変化や知能障害)であり,病気の進行とともに淡蒼球,ルイ体,大脳皮質などでも神経脱落の病変が広がる。これらの部位にはグリア細胞の増加が観察されている。
この疾患に対して遺伝子連鎖解析がなされ1983年,Gusellaら1)の研究から4番染色体にその異常があることが確認された。そして1993年に,The Hunting-ton's Disease Collaborative Research Group(6つのグループの共同研究)の研究から,4p16.3の遺伝子座にIT−15と名づけられた遺伝子が存在し,HDの原因遺伝子(HD遺伝子)であることが明らかになった2)。衝撃的であったのは,その遺伝子のエクソン1に存在するCAGリピート異常伸長とHD発症にある相関関係が存在することであった。すなわち,CAGリピートが極めて長いと発症年齢が若年化し,比較的短いと中年発症となる。脆弱X症候群(FRAXA)3,4)や筋緊張性ジストロフィー症5)などはトリプレットリピート病として認識されていたが,リピートの存在位置は非翻訳領域であった。
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