Japanese
English
特集 遺伝子改変動物から神経変性疾患へのアプローチ
アルツハイマー病の動物モデルの開発とその現状
Development of Transgenic Animal Models for Alzheimer's Disease
渡辺 哲史
1
,
田平 武
2
Norifumi Watanabe
1
,
Takeshi Tabira
2
1国立精神・神経センター疾病研究第6部
2国立療養所中部病院長寿医療研究センター
1Deparment of Demyelinating Disease and Aging, Nationai Institute of Neuroscience, NCNP
2The National Sanatorium: Chubu Hospital, National Institute for Longevity Sciences
キーワード:
amyloid precursor protein
,
Aβ
,
presenilin
,
apolipoprotein
,
tau
Keyword:
amyloid precursor protein
,
Aβ
,
presenilin
,
apolipoprotein
,
tau
pp.809-820
発行日 2001年9月1日
Published Date 2001/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901827
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はじめに
アルツハイマー病(以下AD)およびそれに関連した痴呆症は,高齢者における第4番目の死因であり(将来は第2位になると予想されている),65歳以上で約10%が,80歳以上では30%が羅患している1,2)。ADは神経変性疾患であり,初老期以後において潜行性に発症し,緩徐に進行する痴呆を主症状とする特有な臨床症状が認められる。それらには認知機能障害(記憶,思考・判断力の低下)を中心とした中核症状に加えて,抑うつ,幻覚・妄想のような精神症状や攻撃的言動,俳徊,不潔行為のような異常行動などのいわゆる周辺症状が含まれる。病理学的には,アミロイドβタンパク(Aβ)を主成分とする脳アミロイドの沈着,タウが構成するpaired helical filaments(PHF)およびstraight filamentsという二つの線維成分からなる神経原線維変化および神経細胞死を特徴とする。
多くは非遺伝性の孤発性の発症であり,その原因はまだはっきりとは分かっていないが,約1割は常染色体優性遺伝を示す家族性アルツハイマー病(FAD)であり,近年の分子生物学的手法の発展によりその原因遺伝子が特定されている。
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