Japanese
English
特集 先天性代謝異常と脳形成異常
4.インプリンティング遺伝子異常と脳形成異常
Brain Abnormalities in Genomic Imprinting Diseases
久保田 健夫
1
Takeo Kubota
1
1国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第二部
1Department of Mental Retardation and Birth Defect Research, National Institute of Neuroscience/National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
キーワード:
genomic imprinting
,
Angelman syndrome
,
Prader-Willi syndrome
,
brain disorder
Keyword:
genomic imprinting
,
Angelman syndrome
,
Prader-Willi syndrome
,
brain disorder
pp.437-443
発行日 2001年5月1日
Published Date 2001/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901770
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はじめに
メンデル遺伝形質において,父由来のアレル(対立遺伝子)と母由来のアレルは同等に発現すると考えられてきた。しかしながら,20年ほど前に片親のアレルしか発現していない遺伝子の存在が予言され5),10年ほど前にそのような遺伝子の存在が実証された24,27)(図1)。このような遺伝子をインプリンティング遺伝子と呼んでいる。インプリンティング(imprinting)とは"刷り込み"を意味し,一方の親のアレルが「刷り込まれて」発現が抑制されることからこのように呼ばれるようになった。現在では30を超えるインプリンティング遺伝子が見つかっている。さらにこれらの遺伝子は全染色体上に散らばっているのではなく,特定の染色体領域に遺伝子クラスターをなして存在していることが判明した。インプリンティング疾患はその遺伝子クラスター全体として異常を認めるものが多く,「ゲノム病(genome disease)」の一つとなっている22)。
インプリンティング疾患の研究は,まず責任遺伝子の同定14,23,27)やインプリンティング機構の解明30,31)といった分子遺伝学的解析が進んだ。これらの研究成果として,いくつかのインプリンティング疾患では新しい手法を用いた遺伝子診断技術が開発され正確な診断ができるようになった17,18)。一方,インプリンティング疾患の病態解明はあまり進んでいない。
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