特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
3.発生・分化・老化・再生医学
ゲノムインプリンティングの成立機構
平澤 竜太郎
1
,
佐々木 裕之
2
Ryutaro Hirasawa
1
,
Hiroyuki Sasaki
2
1モンペリエ分子遺伝学研究所
2国立遺伝学研究所人類遺伝研究部門
pp.402-403
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100533
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ゲノムインプリンティングは,父・母由来のどちらか一方の対立遺伝子のみに特異的な発現を引き起こすエピジェネティックな現象である。このように親の由来に応じて発現のオン・オフが制御される遺伝子をインプリント遺伝子と呼び,マウスでは100個近いインプリント遺伝子が見つかっている。この片親性の遺伝子発現は,親の配偶子形成過程においてゲノムに刷り込まれるエピジェネティックな記憶(インプリント)が子の細胞へ伝達され維持されることに由来する(図)。一方,胎仔期の始原生殖細胞ではインプリントはいったん消去され,その後の配偶子形成過程において,個体の性に応じたインプリントが新たに確立される(図)。つまり,インプリンティングは,配偶子形成過程における「確立」,受精後の体細胞における「維持」,および始原生殖細胞における「消去」の三つのステップから成り,体細胞系列では一生の間維持されるが,生殖細胞系列では確立と消去を世代ごとに繰り返す。本稿では,ゲノムインプリンティングを制御するエピジェネティックな機構に関する説の変遷と,最近の結果を踏まえた仮説・学説について概説する。
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